候補染色体領域を対象とした疾患感受性遺伝子探索のための大規模SNP・マイ クロサテライト解析の手法と実際的評価
Empirical evaluation of large-scale SNP and microsatellite analyses for exploring disease susceptibility genes by candidate chromosomal region approaches
竹内史比古、松尾恵、柳内和幸、森居俊行、柳内圭子、長野忍、安田和基、 笹月健彦、白澤専二、加藤規弘
【目的】ゲノムスキャンにより「シグナル」の認められた染色体領域上で、い かに多因子疾患の感受性遺伝子まで辿り着くかは大きな挑戦である。 High-throughput解析技術が進歩するなか、positional cloningに向けた有効 な研究戦略が必要である。現在、大規模タイピングに適したマーカーはSNPと マイクロサテライトであり、これらは独立した解析ステージで用いられること が多い。本研究は、特定の染色体領域上で2種類のマーカーを各々高密度にタ イピングし、両データを「突き合わせる」ことによって、効率的かつ網羅的な 探索手法の確立を目指す。
【方法】日本人を含む複数の人種でのゲノムスキャンにより2型糖尿病との有 意な連鎖が報告されている染色体20番長腕の17.8Mbを対象領域とする。我々は 1144SNP(平均15kb間隔)および239マイクロサテライトマーカー(平均67kb間 隔)を用いて、768人(糖尿病群480人、対照群288人)の相関解析を行ってお り、その際の1次スクリーニング結果を用いる。
【成績】いずれとも95%以上のマーカーは十分なタイピング成功率を示した。 SNPでは、対象染色体領域上に66個の連鎖不平衡(LD)ブロック(60〜400kb) が構築できた。SNPハプロタイプのみ、マイクロサテライトのみで解析した場 合、2型糖尿病との有意な相関(p<0.05)が各々7カ所ずつで認められ、両者の 解析結果が一致したのは1カ所であった。両タイピングデータより統合ハプロ タイプを構築し、またシミュレーションによって各々の偽陽性の生じ易さも検 証した。これらに基づいてデータ融合に最適なアルゴリズムを作成している。
【結論】疾病ゲノム解析においてSNPとマイクロサテライトの相補的活用、特 に同一解析ステージでの有機的な組み合わせが望ましい。