候補遺伝子を対象とした疾患感受性遺伝子変異探索のための大規模SNP・ハプ ロタイプ解析の手法と実際的評価
Empirical evaluation of large-scale SNP and haplotype analyses for exploring disease susceptibility mutations by candidate gene approaches
竹内史比古、森居俊行、柳内和幸、柳内圭子、長野忍、安田和基、笹月健彦、 加藤規弘
【目的】多因子疾患の成因に関して、有望な候補遺伝子が調べられたとしても、 個々の座位でのSNP情報が十分網羅されているか否かは方法論上の鍵である。 また各SNPで単点解析を行うのか、あるいはハプロタイプに注目した解析を行 うのかも重要なポイントである。本研究は、これらに焦点をあてて、大規模な 候補遺伝子アプローチにおける実践的解析法の開発を目的とする。
【方法】動脈硬化性疾患の候補遺伝子151個に関して、全てのエクソン、5'-、 3'-UTR及びプロモーター領域を48人の日本人DNAサンプルでdirect sequencing し、見つかったSNPのうち933 SNP(平均6.2 SNP/locus)をTaqMan法にてタイ ピングした。対象としたサンプルは、人種間比較用パネル(日本人一般集団 113人、白人100人、黒人100人)と疾病解析パネル(高血圧群100人、対照群 102人)であり、遺伝子座ごとに連鎖不平衡(LD)ブロック、ハプロタイプの 構築、“タグ”SNPの選出用アルゴリズムの作成等を行った。
【成績】系統的なSNP探索の結果、1924箇所の多型が同定されたが、3人種に 共通し比較的高頻度な(>5%)SNPは1/3に満たなかった。一般に遺伝子サイズ とLDブロック数とは相関する傾向が認められたものの、一部、LDの保存不良な、 あるいは高度に保存された遺伝子も存在した。各遺伝子座の多型性は、3-7つ の“タグ”SNPによっておよそ代表することが可能であったが、commonなハプ ロタイプの内訳は3つの人種間で必ずしも一致しなかった。さらに疾患ゲノム 解析として検出力のシミュレーションを行った。
【結論】各LDブロックの主要なハプロタイプを代表するSNPのみをタイピング することによって、検定力を損なわず、効率的に、疾患原因変異を探索するこ とができる。これら“タグ”SNPには人種特異的なものが存在する。